手形上の債権債務と原因関係上の債権債務の並存は、主に時効、先取特権、同時履行の抗弁、付遅滞の効果などの文脈の中で論じられます。債権者にとってその意義は多くの場合、手形債務が消滅した場合に備えて原因関係上の債権についての権利を失わせない事にあります。また債務者にとっては原因関係に加えて手形債務の並存によって有利となる場合に意義を有します。
つまり本件のごとく狭義の支払のために手形が授受された場合において、当事者の合意によりその弁済方法につき手形法上の権利行使ではなく、原因関係上の債権債務の弁済とし、かつその履行期を一定期間延期するとした場合には、債権者は既に応諾した事項を除いては何ら不利益を被りません。
即ち両者の並存は、このような和解を容易にする効用こそあれ、これを否定する論拠とはなり得ません。
そもそもDISKYさんが言う「無償で手形を返す」とは、手形を返す事によってあたかもA社に対する請求権を一切喪失させてしまうが如き処理を指します。手形上の債権債務と原因関係上の債権債務の並存があってこそ「『無償で手形を返すべき』とは言っていません」と言えるのであって、並存をもって手形の返却を「無償だ」と言いくるめる主張は、手形理論を正しく理解したものではありません。
手形を受け取ったからと言って直ちに売掛金債権が消滅するわけではないのは当然ですが、実際の経理処理はあたかもそのように表示させてしまい、質問者や私のやり方で手形を返却したときに再び得たように見えてしまいます。実務的な理解としてはこれを『有償で返した』と表現して差し支えなく、簿記的表記に直観的に合致します。

で、
こういうやり方は、強制力をもったルールによれば許されないのでしょうか。何か罰せられるのですか?それとも債権が消滅しますか?なにゆえに?