・銀行振込という形式で授受されたことは、
債務の弁済を受けた者が受取証書を発行する
法律上の義務に何ら影響を与えない。
振込人の手元に残る振込金受取証書は
単に銀行が「送金すべきお金を受け取りましたよ」
ということを証するだけのものであって、
振込先がそのお金を受け取ったこととは
厳密にはイコールでない。(※)
(誤記、誤読、機械の操作ミス等で、
意図しない先に送金されたり、
意図しない額が送金されたりするトラブルが
ありえない訳ではない)
実務上、相手方と債務の消滅を争ったり、
第三者に対して支払の事実を証明したりする上で
銀行の発行する振込金の受取証書には
相当の信頼性があると考えられているので、
それが手元に残っているなら
受取人の発行する領収証までは要求しない、
とする人が多いだけのことである。

・受取証書の発行義務については、
「相手方が印紙の税負担をしない場合には
免除される」等の規定がないので、
相手方に「受取証書の発行義務を果たせ。
印紙税は負担しない。」と言われれば
それまでである。
(もちろん、道理として「負担してくださいよ」と
交渉する材料にするのは何も間違ってはいないし、
発行の場合には税負担を相手方に転嫁する旨
事前に契約をしておくのも自由である。)
ただ、受取証書の発行義務は
債務の弁済と同時履行だから意味がある
(面前で受け渡しする場合、「領収証と
引き換えでないとこのお金は渡しませんよ」
と言える)のであって、振込の場合は
債務を先履行してしまっているから
受取証書の発行義務を履行しない者に対して
発行を強制する現実的な手段が見当たらない、
ということはいえる。

ってなところじゃないでしょうか。

(※)銀行のリスクヘッジのため、正確には
異なる法律構成になっているかもしれませんが、
振込先が受け取ったことの直接の証明にはなっていない
という結論は変わりません