次に、所得税法上の問題として考えてみましょう。

毎月給与の支払いをする場合、それを「源泉徴収簿」につけますね。

源泉徴収簿の見本
http://www.nta.go.jp/category/yousiki/gensen/pdf/h18_03.pdf

毎月25日支払いで支給金額は50万円、そこから徴収される社会保険料が2万円、源泉所得税が3万円、手取額は45万円だとします。
しかし資金繰りがつかず、25日には20万円しか支払えず、残りの25万円は30日に支払ったとします。
どうやって源泉徴収簿に記入しますか?

あるいはもっとひどいことに、一か月分の給与の支払回数が2回、あるいは3回、4回と複数回にわたってチマチマ支払われていたら、どうなるでしょうか?

答え:そんなもん、やってられるかぁ〜!(怒)
ですね。

そこで「役員報酬」という費用は、給料日に全額を費用計上し、支払われなかった部分は「未払金」にしたとします。

 役員報酬500,000 / 現金450,000
             / 社会保険預かり金20,000
             / 所得税預かり金30,000
             / 未払金250,000

するとどうですか?
源泉徴収簿には、25日にすべてを1回で記入できますね。
しかもそのあと、いつ役員にお金を支払おうともそれはすべて「未払金の支払い」ですから、「役員報酬」という費用の計上とは関係ありません。

ただし厳密には、この方法には1つ大きな問題が隠されています。

http://www.nta.go.jp/category/pamph/gensen/2696/01/01.htm
V  源泉徴収をする時期
 所得税の源泉徴収をする時期は、現実に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。
したがって、これらの所得を支払うことが確定していても、現実に支払われなければ源泉徴収をする必要はありません。
(注)  源泉徴収を行う際の「支払」とは、現実に金銭を交付する行為のほか、元本に繰り入れ、又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為をいいます(所基通181〜223共−1)。

とありますので、正確には、未払債務が消滅するつど、つまり未払金が支払われるつど所得税を源泉徴収するべきなのです。

参考:国税庁のホームページより
http://www.taxanswer.nta.go.jp/2526.htm

したがって、うんと厳密にいえば、上記の方法のように給料日に一括して所得税を源泉徴収してしまう事は、所得税法上、ちょっぴり違反しているわけです。
(ま、違反しているといっても、源泉徴収すべき「時期」が違反しているだけであり、源泉徴収そのものはキチンと漏れなくしていますので、税務署は絶対文句いいません。)

「所得税法違反じゃないのか?」という不安を感じながら仕事をするのはイヤなので、未払金ではなくて「短期借入金」にしてみたらどうなるでしょうか?

役員に対する支払いは、「短期借入金の返済」であり、支払債務が消滅する行為ではありません。

つまり、「給与の支払い」と「借入金の返済」は、それぞれ別々の行為として分離されるため、所得税法上は支払いのつど源泉徴収する必要がなくなるのです。

したがって、所得税法上の問題を解決するためには、「未払金」でも実務的にはもちろんOKなのですが、細かいことまでいうと、「短期借入金」とする方法がベストなのです。